「ほぅ、今どき移動なんて珍しいな、
独立ならわかるけどな。何か事情があるんだろう」
「独立出来るほど、経験はない子よ。まだ二十歳の若い子よ。あなたの後ろに隠れている子よりは若くないけどね」
「……わかった。明日、面接しよう」
「じゃ、お願いね。それと電話ぐらい出なさいよ。まさか後ろの子に骨ぬきにされたわけでもないでしょう」
「……」
真梨恵と名乗った女性は手をひらひらと振りながら帰っていった。
「誰なの?あのひと?」
「銀座のクラブ「マリエ」の経営者だ」
「なんかやだな、あの人、馬鹿にしたような目であたしをみてた」
エプロンの裾を両手で握りしめて、つーん、と唇を尖らせているクリロー花子。 なぜか拗ねている……。
(続く)