閑話休題、突然の訪問者
それは、唐突だった。
夕食を食べ終わって、あたしは後片付けをしていた。
不意にインターホンが鳴ったのでモニターを覗いてみた。
「居るんでしょ。私よ、真梨恵よ。開けて頂戴!」
知らない女性がモニターに写っていた。
「どちら様でしょうか?」
「えっ?何よ、遊楽さんの部屋でしょ?」
「そうですが……」
あたしは、彼を振り返った。
「仕方ないな、開けてやれ」
彼の渋い表情で招かれざる客だと思った。
部屋に入ってきた女性は黒いタイトスカートに淡いピンクのブラウスを着ていた。
黒髪を結い上げているのは着物でも着ていたのだろうか?
年齢は二十代後半、もしくは三十になっているか、かなり濃い化粧なので検討がつかない。
「遊楽さん、どうして店に来てくれないの?電話にも出ないし、メールの返信も無しってどういう事なのかしらね」
「仕事が忙しかったんだ。仕方ないだろ」
「へー、今までだって 忙しくっても来てくれたわよね」
「……で何か要件はあるのか」
「要件が無きゃ来てくれないって事なのかしら?」
「まぁ、そう尖るなよ。明日、店には行くから」
「……お待ちしております。じゃその時に新しい子を面接して欲しいのよ」
「んっ?新しい子って?」
「あなたも知ってる「樹々」から移動したい子がいるのよ」
(続く)
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