優しい瞳
「女将さん?どうしたんですか?」
琴江が訝しげに私の顔を見ている。
「琴江さん、今夜もこれ食べたいわ。買ってきてくれる?」
「はい、直ぐ売れきれちゃうから昼頃行って買ってきます」
「じゃお願いね」
そうだ、今日は日曜日。
図書館へ行ったら、もしかしたらあのひとに会えるかも知れない。
苦しませてしまうのはわかっている。でも遠くから見るだけで私は満足出来るだろう。
藍色のスカートに、お気に入りの花模様の刺繍のある白いブラウスを着て私は出かけた。
やっぱり、あのひとはいつもの場所で本を読んでいた。
窓際の一番奥の机、晴れの日には窓からの日差しで暑くて仕方ないんだと言っていた。
遠くから見るだけの筈だったのに……
身体が勝手に吸い寄せられる様に動いてしまった
隣に、すっと座ってしまう
意外な事にあのひとは驚かなかった
いつもの優しい瞳が私を包み込んでくれる
(続く)
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