yuurakusai2のブログ

手間をかけない小さな庭の物語(クリスマスローズ、雪割草、ハーブ等、小さな庭に自生している花々を投稿していきます♪)

うたかたの夢

「美沙子、少し歩こうか?」


 彫りの深い横顔にウェーブのかかった煌めく黒髪が靡く。


  漆黒の瞳が私を見つめて微笑んでいる。 これは夢なの?





「一緒に行ってもいいの?」


「折角、美沙子が来てくれたんだもの……」


あのひとは、私の肩をそっと抱いて歩き始めた。



「何処へ行くの?」


「そうだね、あの公園まで歩こうか」


 図書館から十分程歩くと、自然公園がある。


 ふたりは、よく散策したりお弁当を食べたりした思い出の場所だった。



 私は、彼の腕に絡まるようにして歩いていく


木陰のベンチに座ると、私は彼の胸に収まって至福の時を楽しむ




 私の黒髪を優しく撫でてくれる柔らかな感触、永遠に続いてほしいと願う







 少し開いてる窓から、するりと微風が入り込んで頬を撫でていく


 薄っすらと瞼を開けると、いつもの因幡杉で貼られた天井が見える


  頬を伝う涙で枕が濡れている


   今日も静かな雨音が聞こえた






(fin)