うたかたの夢
「美沙子、少し歩こうか?」
彫りの深い横顔にウェーブのかかった煌めく黒髪が靡く。
漆黒の瞳が私を見つめて微笑んでいる。 これは夢なの?
「一緒に行ってもいいの?」
「折角、美沙子が来てくれたんだもの……」
あのひとは、私の肩をそっと抱いて歩き始めた。
「何処へ行くの?」
「そうだね、あの公園まで歩こうか」
図書館から十分程歩くと、自然公園がある。
ふたりは、よく散策したりお弁当を食べたりした思い出の場所だった。
私は、彼の腕に絡まるようにして歩いていく
木陰のベンチに座ると、私は彼の胸に収まって至福の時を楽しむ
私の黒髪を優しく撫でてくれる柔らかな感触、永遠に続いてほしいと願う
少し開いてる窓から、するりと微風が入り込んで頬を撫でていく
薄っすらと瞼を開けると、いつもの因幡杉で貼られた天井が見える
頬を伝う涙で枕が濡れている
今日も静かな雨音が聞こえた
(fin)
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