あたしの素敵な時間
閉じられたカーテンの隙間から光が零れていた。
どのくらい時が過ぎたのだろうか?時間の感覚が麻痺してしまって夕方なのか朝なのか分からなくなっている。
あたしは薄っすらと瞼を開くと、あのひとの腕の中に収まっていた。
あぁ、愛しいひと……
彼と一緒の部屋で過ごしただけでも幸せなのに、あたしは彼に抱かれて甘美な痺れに酔いしれている。
「マルシェ」で働き出した時から彼に一目惚れしてしまった。
半年後、たまに訪れる彼に話しかけられた時は夢ではないかと自分の頬をつねってみた程だった。 私はそれから必死で業務に励んだ。
少しでも彼に、遊楽さんに認めてもらいたくて……彼はいつも、あたしに優しく接してくれる。あたしは店員なのにまるで恋人の様に扱ってくれた。
店内でも噂になるぐらいだったが、あの忌々しいクリロー花子が現れてからは状況が変わっていった。
休日には、彼からドライブやショッピングに誘われて幸せだったのに、あの花子が彼と同居するようになってから、あたしは一度も誘われなくなっていた。
その時からラインのトーク履歴が止まってしまって、悔しくて幾晩も枕を濡らしたものだった。
でも今、あたしは夢の様な時を過ごしている。あのひとの腕に抱かれて……。
(続く)
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