yuurakusai2のブログ

手間をかけない小さな庭の物語(クリスマスローズ、雪割草、ハーブ等、小さな庭に自生している花々を投稿していきます♪)

Side:美月

 静かな雨音が聞こえる。


少し開いてる窓から、するりと微風が入り込んで頬を撫でていった。


薄っすらと瞼を開けると、いつもの因幡杉で貼られた天井が見える。


 とても切ない夢をみていた気がするけれど、思い出せないのがもどかしい。
でもあのひとの笑顔だけが何故か記憶に残っている。


 この部屋はどこか空気が澱んでいた。決して物が散乱しているとかじゃない。
むしろ部屋は綺麗に保っているし、物をあまり置いていない。


 私の内側から滲み出てくる鬱屈したものが、部屋の空気を澱ませているのだろう。


「どこもかしこもぼろぼろじゃねえか」


 あのひとは寝ながら私を抱き寄せた。
その腕は私をしっかり掴んで、それは何度もあると無邪気に思い込んだ。



さよなら 初めて愛したあなた


あなたのくれた抱擁や彼女という呼び名


  忘れない 月の光に照らされ あなたを失う涙に濡れた夜







(続く)