Side:美月
静かな雨音が聞こえる。
少し開いてる窓から、するりと微風が入り込んで頬を撫でていった。
薄っすらと瞼を開けると、いつもの因幡杉で貼られた天井が見える。
とても切ない夢をみていた気がするけれど、思い出せないのがもどかしい。
でもあのひとの笑顔だけが何故か記憶に残っている。
この部屋はどこか空気が澱んでいた。決して物が散乱しているとかじゃない。
むしろ部屋は綺麗に保っているし、物をあまり置いていない。
私の内側から滲み出てくる鬱屈したものが、部屋の空気を澱ませているのだろう。
「どこもかしこもぼろぼろじゃねえか」
あのひとは寝ながら私を抱き寄せた。
その腕は私をしっかり掴んで、それは何度もあると無邪気に思い込んだ。
さよなら 初めて愛したあなた
あなたのくれた抱擁や彼女という呼び名
忘れない 月の光に照らされ あなたを失う涙に濡れた夜
(続く)
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