第2話 レンテンローズ
原種トルカータスの自生地であるトラヴニクは、ボスニア・ヘルツェゴビナの都市で首都サラエヴォからは約100kmほど北西に位置しており、ボスナ川の支流であるラシュヴァ川が街を流れている。
トラヴニクはラシュヴァ川の渓谷に作られた街で東はボスナ川渓谷、西はヴルヴァス川渓谷とつながっている。
早速、私は滞在しているホテルの裏山斜面を登ってみたが、残念な事に変異種どころか、トルカータス本体さえ見つけられなかった。
お蔭で、今朝はかなりの筋肉痛にさいなまれている状態だが、弱音を吐く暇など無い。早々に朝食を済ませると身支度を整え、変異種探しに出発しなければ……
一応、原種トルカータスの自生地が近くにあるかどうかを、ホテルフロントで聞いてみる事にした。
「この街には、クリスマスローズの自生地があるかしら?」
「クリスマスローズですか?聞いたことないですが……」
フロントの銀髪碧眼の女性は首を傾げている。
「レンテンローズでもいいのですが?」
「あっ、それならトラヴニク自然公園で沢山咲いてますよ」
「えっ、沢山咲いてるって?」
「はい、丁度良い時期ですね」
そうか、レンテンローズなら通じるのか……クリスマスローズと言っても、この地域では分からないのも無理はない。原種オリエンタリスを四旬節(Lent)に咲くのでレンテン・ローズ(Lenten rose)とも言うのだった。
しかし、原種オリエンタリスがこの街で咲いてるのは違和感がある……。
まぁ、とりあえずトラヴニク自然公園まで行くしか無いだろう。
歩くこと20分程で自然公園に着いた。ラシュヴァ川の渓谷を吊橋で渡りきると木製の看板「トラヴニク自然公園」が出迎えてくれる。
休日であれば、市民の憩いの場になるのだろうがあいにく今日は平日の雨模様だ。誰も居ないのが当然だろう。
雑木林の中、木材チップが敷かれた遊歩道を、ゆっくりと歩いていく途中だった。雑草の中に、にょきにょきと咲いているのはトルカータスだった。
ぞわりと鳥肌が立った。
「あっ、こんなにも……」
思わず膝をつき、被っていたフードを跳ね飛ばした。
太い茎に見事なベインが入った花弁、まさしくトルカータス。
「うっわっ、あそこにも、あっ、ここにも咲いてる」
そうか、ここはトルカータスの楽園なのか……。
(続く)
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