クリスマスローズ物語「Dido」と「Aeneas 」
クリスマスローズ愛好家なら誰でもが憧れるであろう花、トルカータス「Dido」
その花は、希少にして可憐、愛好家を魅了してやまない。
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トルカータス「Dido」を題材にした作品を「株式会社KADOKAWA」のカクヨムに投稿しましたので、お読みください。
(エリザベス・ストラングマン女史が今や伝説の原種トルカータス、Dido、とAeneasをボスニア・ヘルツェゴビナで発見した物語です。)
★クリスマスローズ物語「Dido」と「Aeneas 」★
第1話レンテン・ローズ
私は、エリザベス・ストラングマン。イギリス、ロンドン郊外でウォッシュフィールドナーセリーのオーナーであり育種家である。
今、私は、二日前からトラヴニクと云う街に滞在している。
何故、はるばるロンドンからこのトラヴニクの街までやって来たのかって?
それは、クリスマスローズの原種トルカータスの変異種を探し出し採取することだ。1850年ベルリン植物園で始まったクリスマスローズの品種改良は、今やイギリスが中心のようだ。冬のイギリスは厳しい、そして花がない。だからこそクリスマスローズの品種改良が進んだのだろう。
品種改良の中心になった原種が「ヘレボルス・オリエンタリス」で、数多くの品種が開発された。
原種オリエンタリスは、種名のごとく東方のヘレボルスで、トルコ、グルジア、ウクライナが原産地であり、耐寒性が強く丈夫な品種だ。ただ政情不安定なところが多いのが難点で、まだまだわからないことがありそうだ。
イギリスで新進気鋭の女性育種家ヘレン・バラードは、あらゆるものを交配させ彼女の名前がつけられたヘレボルス・バラーディアエ(H.x ballardiae)と呼ばれる交配種の作出に成功した。そしてそこから、オリエンタリスとの交配で様々な色彩の品種開発を始めている。
だから、正直、私は焦っている。 ヘレン・バラードはイギリスのクリスマスローズ園芸品種開発の先端を突っ走っているが、私のウォッシュフィールドナーセリーでの品種改良は失敗続きで完全に遅れてしまっている。
イギリス園芸界の中で今まで築き上げてきた私の育種家としての名声は完全に地に落ちてしまっていた。
そこで、一気に挽回すべく原種トルカータスの変異種を探し出して、驚くような交配種を創り上げるのだ……。
(続く)
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