閑話休題、モエ・シャンドン
「まさか、このシャンパンを飲めるとは思わなかったわ」
マリーナベイの夜景に酔いしれながら、あたしは熱い吐息をもらした。
「リッツのクラブラウンジは、モエ・シャンドンにワインが八種類、カクテル、ビールも飲み放題だしオードブル、小皿料理も豊富だよ」
「このラウンジって無料なの?」
「まぁ、そうだね。エグゼクティブフロアのお客専用だけどね。そろそろ午後八時からのマダムの好きなチョコレートタイムがあるよ」
「それは魅力的ね、少し戴こうかしら」
あたしは小さく舌を出した。
光が降り注いでいる。
部屋中に溢れかえる朝日には南国の熱量がたっぷり含まれている様な気がした。
あたしは薄っすらと瞼を開けると、いつもと違う天井の模様が見える。
とても切ない夢を見ていた気がするけれど、彼に抱きつけば切ない気持も消し飛んでしまう。
「やっぱり、マダムの作るフレンチトーストが美味しいよ。ここのはパンが薄いし美味しくないよ」
遊楽さんは、小声であたしに言った。
「そりゃそうよ。うちで作るフレンチトーストにはあたしの愛情がたっぷり含まれてるんですからね」
あたしは彼に見つめられながら幸せを感じていた。
クラブラウンジで朝食を済ませて、マーライオン公園まで散策すると、
朝はまだ観光客が少なくて、ふたりで写真を撮ったりしてのんびりと過ごした。
(fin)
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